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迷子の迷子の皇帝陛下

投稿者:
  • 投稿日:2019/4/8
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困った。黒陛下とはぐれた。皇帝陛下が迷子になってしまったのだ。しかも言葉の通じない外国で。状況を整理してみよう。ラムちゃんと半日ドライブして、天むすを土産に帰ったら、ものの見事に黒陛下がスネていたのである。『いいわよいいわよ!焼きもちなんか焼いてないわよ!あたし一番の彼女で婚約者だけど、置いてきぼりにされて怒ってなんかないわよっ!!』と、頭をなでなでしても、抱きしめてちゅっちゅしても、一向に曲がったヘソが直らない。コメツキバッタのように土下座をくり返して、ようやく『…じゃあ、あたしも行きたいトコあるから連れてってよ』と、斜め45度だったご機嫌を30度くらいにまで戻してくれた。さすがに断れるハズなんか、ないよね?黒「あ、そのワンピースもいいな~♡さっき買った靴に合いそう♡ああ、でも、それだったらカーディガンとかも合わせなきゃだし…え~い!ぜんぶまとめて買っちゃえ~!!」抱えた荷物で前が見えない。それでも『よくお似合いですよ』と言わないと、鋭いローキックが飛んでくる。げに恐ろしきは、ヨーロッパ買い物紀行である。いくら帝室専用ウルトラスーパーデラックスプラチナカードとはいえ、いいかげんそろそろヤバくないか?アフリカあたりの小国だったら、国家予算レベルだぞ?(汗)…などと思っていたら、いつの間にか、黒陛下の姿が見えなくなっていた。お手洗いでも行ったのかな?と待ってみたが、ぜんぜん戻ってきやしない。さすがに不安になって、スマホにかけてみると、預かっていたハンドバッグの中からピロリン♪と着信音が響く。おいおいおいおい!?やべーよやべーよ!!ただでさえ方向音痴の黒陛下が迷子になっちまったよ!!しかも言葉の通じない外国で!?…というのが、偽らざる悲惨な現状である。迷子になったときには、はぐれた場所から決して動かないのが鉄則だ。下手にあちこち探しまわれば、二重遭難の恐れもある。ただ問題は、パニックに陥ったときの黒陛下は、そんな基本事項すら頭からきれいさっぱり吹き飛んでしまう…というコトなのだ。さすがにコレは、警察なり大使館なりに連絡入れたほうがいいかな?と思っていたら、なにやらまわりが騒がしい。よく分からない外国語で、みんなワイワイ騒いでいる。一人をつかまえて翻訳アプリで尋ねてみると『裸の女が暴れて市電を止めた』らしい。…えーと、コレって、誤訳じゃないよね?・・・・・・・・・・・黒「うわああ~ん!恐かったよお~っ!!」市電を止めた裸の女が、俺を見るなり涙目で抱きついてきた。ああ、地元の皆様の視線が痛い。黒「うっうっうっ。あたし、仕返しに、今度はあんたのこと置いてきぼりにして、心細そうにしてんの物陰からニマニマほくそ笑んでやろうと思ったのに…あたしのほうが迷子になっちゃったよ~!どこがどこだか分かんなくなっちゃったよ~!言葉ぜんぜん通じなくて恐かったよ~っ!!ひっくひっくひっく…」なでなで、なでなで、抱きしめてなでなで。…ええい、子供か!?この皇帝陛下は!?(溜息)黒「それで、それで…裸で踊ってたら、目立つから見つけてもらえるかも?って思ったのに、ワイワイ近寄ってくるのはスケベなおっさんばっかだし!電車は止まるし車はクラクション鳴らすし!通りがかった修道女の一団は天を仰いで十字きるし~!?あたしがナニしたってのよ!?スッポンポンで踊ってただけじゃんか~っ!!」なでなで、なでなで、ひたすら頭なでなで。…うんうん、外交問題に発展しないで本当に良かった。(達観)黒「…な、ナニ苦笑しながら、優しい目で頭なでてんのよっ!?怒んなさいよ!!でなきゃ困んなさいよ!?こんな手間がかかって、世話が焼けて、面倒臭い彼女はいないって!!頭抱えて途方に暮れなさいよっ!?」ふくれっ面を真っ赤にして、くってかかる黒陛下の唇を、優しくキスでふさぐ。黒「…っ!?…ん、んんっ、んっ♡」あのですね、黒陛下?もう、手遅れですから。俺、そんな段階もう、とっくに通り越してますから。お茶目で、バカで、おっちょこちょいで。ホントもう、手に負えない彼女ですけど…それでも、誰よりも一番、大好きな恋人なんですから。黒「…ばっ!バカバカバカっ!!あんた、女の趣味悪すぎよっ!!」あー。ソレって確か、母后陛下が、亡き先帝陛下のプロポーズをお受けしたときの台詞ですよね?母娘ですねえ。そっくりですねえ。(優しいまなざし)