ファラオの愛車

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ラ「ねえ、ちょっと頼みがあるんだけど、いい？」ん？他ならぬラムちゃんの頼み事なら、二つ返事で引き受けるけど…いったい、ナニ？ラ「ありがとっ♡実はね、私のクルマなんだけど、年式も距離もけっこういってるポンコツなのよ。でも、くたびれてはいるんだけど、免許取って初めて乗ったクルマだし、今まで大切に乗ってきたから、それなりに愛着もあるのよね。それで、まだまだ乗れそうなのか？それともそろそろ買い換え時なのか？私、機械関係とかよく分からないから、そのへん見極めるために、あなたにテスト走行がてら、ちょっとドライブに付き合って欲しくって」ああ、なるほど。イイよ別に。ラムちゃんの愛車、言われてみれば、確かに年代物だもんね。最初は驚いたもんなあ。なんで神にも等しいファラオが、あんな中古車に乗ってるんだ？…って。ラ「ああ、ソレ？うん、免許取りたてのとき、お父さんが『縦列駐車も下手だし、車庫入れも下手くそ。どうせ初心者でぶつけたりこすったりするんだから、中古車で十分だろう。おまえにフェラーリを廃車にさせるために、民は税を納めているワケではない』って。でまあ、ぶつけても惜しくないクルマを選んだら、アレだった…と。失礼しちゃうわよね、娘の運転、ぜんぜん信用してないんだから！」う～ん、女性ドライバーを差別する気はないけど…永楽さんみたいな例もあるからなあ。（汗）ラムちゃんの助手席には座ったことないけど、まあ、アレよりはマシだろう。…というか、そうあって欲しい。（切実）ラ「それじゃあ、とりあえず出発しますか～。あ、中古でカーナビとか積んでないから、地図見てナビよろしくね♡」えー。（面倒）・・・・・・・・・・・・・正直言って、意外だった。ラムちゃんの運転は丁寧で落ち着いていて、それでいて変にモタついたりもしなくて、スピードを出しすぎることも無理な追い越しをすることもなく、まさに運転マナーのお手本のような走り方だった。二種免許さえ取れれば、明日からでもタクシーを転がせそうなほどだ。そして、ラムちゃんの愛車もまた、良い意味で意外だった。とっくに月まで行けそうな走行距離なのにもかかわらず、大切に手入れされてきたのだろう。エンジンも快調、足回りも良好。カーナビは積んでないし、カーステもカセットテープだけど、ぜんぜん何の問題もない。外装もくすんではいるが、きれいにワックスがけされて磨き上げられ、内装もくたびれてはいるが、きちんと掃除されてシミひとつ無い。ところどころ塗装に細かい傷があったり、シートがほころびた跡もあったが、素人細工ながら、丁寧に塗りなおしたり繕われていたりする。きっと、ラムちゃんが自分で、真心込めて直していたんだろう。『がんばって走ってくれて、ありがとね♡』そんなラムちゃんの優しい思いやりが、クルマの隅々から感じられる。兄弟が何百万台いるかしらないが、コイツはその中でも、とりわけ幸福な一台だと言える。ラ「どう…かな？ここまで走ってみて、この子。やっぱり買い換えたほうが、イイと思う？」ボンネットを開けて、あちこち点検していた俺に、ラムちゃんが心配そうに尋ねる。いや、買い換える必要はないでしょ。ラムちゃん運転上手だし、コイツもまだまだ元気に走れそうだし。年式だって、俺の愛車に比べたら、コイツなんか新車もいいとこだしね。どうかこのまま、最後まで乗ってやってあげてよ。ラムちゃんだって…本当は、そうしたかったんでしょ？ラ「ふふっ、良かった。あなたならきっと、そう言ってくれると思ってたんだ♡じゃあ、そろそろお腹すいたし、ごはん食べてから帰ろっか？私、ひつまぶしがイイな～♪」なら俺は、味噌煮込みうどんがイイかなー？…あ、でも、腹ごなしにカーセックスってのはナシだからね？このクルマ、狭くて、そんなコトできる余裕ないからね？ラ「ええ～！？けちんぼ～！いいもんいいもん！ラブホだったらインターの近くにいっぱいあるもん！！」うん、まあ、ラムちゃんだし。そのへんの下調べはぬかりないよね。ラムちゃんだもんね。（汗）