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いけない!リン先生

投稿者:
  • 投稿日:2019/3/23
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どこからか、遠き山に日は落ちてのメロディが聴こえる夕暮れ時。リンが、ベランダから夕陽をながめていた。風にそよぐ銀髪が、きれいな小麦色に染まっていた。もう、ここでの暮らしも、だいぶ慣れてきた?リ「…あ、同志ちゃん。うん、最初は皇帝とかファラオとか特権階級ばかりで驚いたけど、みんな優しくて良い人たちだよね。康熙さんとかラムセスさんとか、とっても良くしてくれるし、妹のイクちゃんとも、同志ちゃんの思い出話で盛り上がれるし♡こんなに平和で暖かで、優しさにあふれた帝国もあるんだなあって、革命家としては絶賛アイデンティティ崩壊中♡ほんと、戻ってこられて良かったよ。同志ちゃんとも…結ばれたしね♡」そうか、それなら良かった。リンが笑顔でいてくれるんなら、それが一番、俺も嬉しいよ。実を言うと、ちょっとだけ心配してたんだ。リンは小さい頃から筋金入りの革命家だったから、黒陛下やみんなを人民の敵呼ばわりして、大ゲンカになりゃしないか?ってね。リ「うふふっ、やだなあ。あたしが打倒するのはね、特権階級にあぐらをかいて、弱い者いじめする人民の敵だけだよ?回覧板持ってきた近所のおばさんと噂話に花が咲いて、お鍋吹きこぼれちゃったり、元気よく『おはようございます♪』って挨拶して、牛乳配達のおじさんにヨーグルトおまけしてもらっちゃう、そんな人民の敵なんていやしないよ♡毎日が嬉しくて楽しくて、たまらないもん♡…あ、でも、ひとつだけ。不満があると言えば、あるかなあ?」え?なに?もしかして、眼鏡越しじゃなく、顔に直接ぶっかけて欲しかった?リ「バ~カ。眼鏡に出されるのも、飲まされるのも大好きよ♡そうじゃなくてね、あたしほら、ココに置いてもらってるのに、なんにもお手伝いしてないじゃない?コレじゃただの、無駄メシ食らいの居候じゃない?『働かざる者食うべからず!立て万国の労働者!!』って、ナニかお手伝いできるコトはないかなあ?って思ってたんだけど、ベイさんのごはん食べたあとじゃ…さすがに『お料理します!』とも言えないし。ベイさんて、お掃除お洗濯その他もろもろ家事全般ほぼ完璧だし。どうしたらいいかなあ?って考えてて」無駄メシ食らいの居候…って、なんか胸にグサグサ突き刺さるんですけどー?(涙)まあ、働き者のリンにしてみれば、なんとか役に立ちたいって思うのも無理ないけど…ナニか手伝えるようなコトなんてあったかなあ?リ「ソレなんだよね~。ナニかこう、ちょっとしたコトでもあれば…あ!」ふとリビングに視線を移したリンが、ナニか獲物を見つけたように目を輝かせる。そのまなざしの先には、対戦ゲームに熱中している、アルちゃんとレオンちゃんの姿があった。リ「ねえねえ、アルちゃんレオンちゃん。今日の宿題は、もうやっちゃった?」ア「え~。ゲームしてるのに嫌なコト思い出させないでよ!そんなの、ぜんぜん手つかずに決まってるじゃん!!」レ「そうですわ!宿題から目を背けたいからこそ、こうしてゲームで現実逃避しているんですのよ!?あんなモノ、寝る前にでもテキトーに片付ければ十分ですわ!!」リ「うんうん、そっかそっか♡その調子だと、あなたたち、勉強苦手みたいね?よーしよしよし♡あたしが宿題手伝ってあげよっか?ついでに、授業で分かんなかったトコなんかも教えてあげる。あたし、こう見えても、勉強だけはちょっと自信あるんだ♡」宿題を手伝ってくれるという一言で、アルちゃんもレオンちゃんも、まるで天使と出会ったように目を輝かせる。うん、そう言えばリンのやつ、成績はいつもクラスで一番だったもんなあ。俺もさんざん、宿題手伝ってもらってたっけ。二人の家庭教師役だったら、リンにうってつけかもしれない。それに上手くすれば、もうじき受験生になるイクの勉強も見てもらえるかもしれない。だとしたら、願ったりかなったりだ。もう二度と、中〇二年の数学で頭を抱える、情けない兄貴の姿を見せずに済む。イクの冷ややかな軽蔑のまなざし、アレ、けっこう心が折れるんだよなあ…。(涙)・・・・・・・・・・・・どう?勉強はかどってる?紅茶とケーキをお盆に載せて、勉強部屋まで様子を見に来た。最近、ナニが凄いといって、あんなに勉強嫌いだったアルちゃんもレオンちゃんも、めっきり勉強好きになって、知性の光で瞳が輝いているのだ。(驚)ラムちゃんなどは『いったい、どうやって洗脳したのかしら?…薬物?』と首をかしげる始末だし、永楽さんも『知識欲ってね、いったん火がつくと止まんないのよ。性欲・食欲・睡眠欲に並ぶ、人間の四大欲求と言っても過言じゃないわ。ただ、まあ、ソレだけに取り扱いも厳重注意なんだけどね?オッペンハイマーを駆り立てたのだって、そもそもは単なる知識欲だったんだから』などと恐いコトを言う。まあ、ナンにしても、勉強が嫌いなよりは好きなほうがマシだろう。少なくとも、リンがそれで自分の居場所を見つけてくれたんなら、幼馴染みとして俺も嬉しい。ア「あ、お兄ちゃんありがと~♡ねえねえ、リンお姉ちゃんてすごいんだよっ!すっごく分かりやすくて、今まで分かんなかったトコもすらすら分かるようになって、学校や塾の先生なんかより、よっぽど教え方が上手いんだからっ♡」レ「ええ、お勉強がこんなに面白くて楽しいモノだなんて、ちっとも知りませんでした♡リンさん…いえ、リン先生は、素晴らしい方です♡あたくしの恩師ですわ♡」リ「そ、そんな褒めすぎだよ~♡でも、喜んでもらえてるんなら、嬉しいな♡もっともっと、勉強がんばろうねっ♡」うんうん、リンもアルちゃんもレオンちゃんも、みんな楽しく勉強してて、良かった良かった。ア「うんっ!もっともっと勉強して、もっともっと賢くなって。そしたら、資本主義のブタなんかイチコロだねっ♡」…え゛?レ「そうですわ!労働者をしいたげ搾取をむさぼる、人民の敵を倒すその日まで!革命目指して勉学に励みますわよっ♡」…なあ、リン?おまえ、いったい…ナニを教えていたんだ!?(白目)