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地雷を踏んだらさようなら

投稿者:
  • 投稿日:2018/11/3
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その惨劇は、ふとした何気ない疑問から始まった。そういえば、お名前はよくお聞きしますけど、先帝陛下ってどんな方だったんですか?ぴきーん!白黒両陛下の笑顔が凍りつき、母后陛下の目がぎらりと光る。…ああ、これは踏んだんだな。地雷を。母「そうかいそうかい、聞きたいかい?聞きたいとあっちゃあ、話してやらざるをえないねぇ…」白「あ、あらぁ~、お姉ちゃん大事な用事を忘れてたわぁ~。今すぐ片付けないとぉ~」黒「お、お姉ちゃん待って!あたしもっ!あたしも手伝うからっ!!」あの黒陛下が、俺を見捨てて、逃げた。これだけでも、どんな運命が待ちかまえているのか、想像したくないけど想像できる。つまり、生き地獄…ということだ。白「ここ何年かなかったから安心してたけど、とうとう再発しちゃったわねぇ~」黒「ママがセックスより好きな唯一のこと、それは…パパとののろけ話を他人に聞かせること。それをあいつに忠告するのを忘れていた、あたしのミスだわ。あれは正直、命にかかわるもの。あたし、48時間ぶっ通しで聞かされて、ドクターストップかかったもの…」白「それくらいでなによぉ~。お姉ちゃんなんか、点滴打ちながら72時間連続よ?最後のほうなんか、世界がピンク色に輝いてて、とってもキレイだったの覚えてるわぁ~」黒「とりあえず、救出チームの手配だけはしときましょ。見捨てて逃げたあたしが言えた義理じゃないけど…」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・母「…でね、勲章の授与式んとき陛下の目に止まったらしくて、どういうわけか宮廷武官なんかに抜擢されちまってさ。似合わないよねぇ、自分で言うのもナンだけど。そんで、おとなしくしてりゃいいもんを、つい性根の腐った重臣にムカついてマウントとってタコ殴りにしたら、あいにく鍛えてないブタ野郎だったもんで半殺しにしちまったんだ。あえなく最前線に飛ばされて、明日をも知れない命ってときに、なんと陛下がお忍びで前線基地においでになってね。折り入って二人きりで話がある…なんておっしゃる。まさか勲章なんかくれるわきゃないし、はていったい何用だろう?と思ってると『おまえは嘘がつけない。嘘をつけるほどの頭がない。おまえは曲がったことが嫌いだ。鉄砲玉のようにまっすぐ突き進むことしかできない。だから、私の后になってほしい』ときたもんだ(キャーキャーキャー♡)!!あたしの目をまっすぐ見つめて、指輪を差し出し、固唾を飲んであたしの返事を待っていて下さる。女冥利に尽きるってのは、ああいうのを言うんだろうねぇ♡だからあたしも、差し出された指輪をはめて、そのまんま陛下の顔面に左フックをブチ込んだ。『陛下、あんた女の趣味悪すぎ!!』って、プロポーズをお受けしてね♡鼻血だらだら流しながら、前歯の折れたお顔でにっこりと…ああ、あんときの陛下の嬉しそうな、幸せそうなお顔は、忘れようったって忘られやしないよ。女に生まれて良かったと、心の底から思ったねぇ♡」あ、あは、あはは…。母「なのにさ、さあ新婚さんでございとルンルン気分で宮中に入ったら、なんとお姑さんが二人もいやがった!先々帝のお后様と…あのクソったれな大帝陛下だよ。お后様はいいんだ、お優しい御方で気配りもできて、軍人上がりのあたしを本当の娘のように可愛がって下さった。なのに、あの二千年も生きてやがるクソったれババアは、新しい女中でも雇ったみてえになんやかんやとコキ使いやがる!味噌汁作りゃ辛すぎる、雑巾がけすりゃ拭き残しがある、いちいち文句を付けねえとこがねえ!!しまいにゃ『こんなメスゴリラを嫁に選ぼうとは、はてさて、どこで倅の育て方を間違うたのかのう?』なんぞとほざきやがった!!姑だと思って下手に出てりゃ言いたい放題ぬかしてやがって!文句があんなら腕っぷしで来い!!…と、息まいてはみたが、どっこいババアの強さは尋常じゃねえ。こてんぱんにのされて悔し涙にくれてたら、陛下が優しく肩をぽんと叩いて『母上が苦労をかけるが、堪忍してやってくれ。どうしても泣きたいときは、私の胸で泣くといい』なんて言ってくれちゃって、もうもうもう(キャーキャーキャー♡)!!」あ、あー、あ、あ…。母「おいおい、こっからがイイとこなんだ。白目むいてねえでしっかり聞けってば」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A「突入班アルファ、ブラボー、チャーリー、配置に付きました!いつでも行けます!」B「救急ヘリ、ホバリングにて待機中!」C「医師として最善は尽くしますが、脳に深刻なダメージを負っている可能性もあります。万一の場合…って、モニター中の心音、急激に低下!?まずいぞっ!!」黒「…あ、あ、あああああああぁっ!!!」白「取り乱しちゃダメ!一秒を争うわ!今すぐ突入して!!」始「なんじゃなんじゃ、騒々しい。うむ?またアレか?あんなものはのう…」やにわにドアを蹴破り、ずかずかと部屋に踏み込んだ大帝陛下が、母后陛下の後頭部をはり倒す。それだけで、ぐるぐると宙を舞った母后陛下は、コンクリ壁に顔面からめり込んだ。始「…こうすれば良いのじゃ。手間をかけさせるな」こうして、惨劇はその幕を下ろした。新聞にはただ『本日、帝室で災害救助訓練が執り行われた』と、小さく報じられただけだった。